- 疲れやすく、体調を崩しやすい
- 太れない
- 頭痛/息切れ/むくみ
- 気分の落ち込み
- 症状が怖くて食事を控えてしまう
- どれくらい食べたらよいかわからない など

こんなお悩みはありませんか
こんにちは
看護師のたかはしです
ナース歴・潰瘍性大腸炎歴はともに20年以上となりました。
あなたの症状が少しでも改善されますよう、これまでの苦労や経験を活かし、医療者としてご提案・ご案内をしてまいりますので、どうぞよろしくお願いします!

エネルギー、足りていますか?
潰瘍性大腸炎は、やせている方が多い印象があります。
中には、減量が必要な方もおられますが、
平均してエネルギー不足、栄養失調を起こしている場合が多いでしょう。
やせの度合いは、炎症の程度、症状の厳しさに左右されますが、
そのまま放置すると、体全体の機能が低下してしまいます。
今日は、1日に必要なエネルギー(カロリー)はどれくらいか、
それをどのように、タンパク質・脂質・炭水化物に振り分けていくかを
一緒に見ていきたいと思います。
1日に必要なエネルギー量
潰瘍性大腸炎とエネルギー
潰瘍性大腸炎は、エネルギーを必要としています。
それは、次のような理由があるからです。
- 炎症や発熱で、エネルギーを消費する
- 腸粘膜のただれや潰瘍(かいよう)の修復にエネルギーを使う
潰瘍性大腸炎は、こういった病態に加え、
食事が食べられない、控えてしまうなどの食の事情があるため、
不足のリスクを、常に背負っていることになります。
エネルギーの供給が追い付かないとき、私たちの体は、筋肉を分解して補いますので
体重減少に繋がってしまうんですね。
筋肉が分解される過程は、グルタミンの記事をご覧くださいね。

症状改善を目指す手がかりになれば幸いです
1日に必要なエネルギー
1日に必要なエネルギー(カロリー)は
【標準体重】 × 【体重1㎏に対して必要なカロリー】で算出できます
算出された値を、きっちり守りましょうという事ではありません。
現在のエネルギーの過不足を知り、食事摂取の目安とすることが目的です。

標準体重

かなや先生
標準体重はご存知かと思います。
下記は、標準体重の定義です。
「肥満もやせもなく、一定期間内の死亡リスクや、病気にかかる率が有意に低いなど、
最も健康的に生活が出来る、と認定された理想的な体重のことをいいます」

それでは、標準体重を算出してみましょう
- 【身長m】 × 【身長m】 × 22 = 標準体重
「160㎝」の方を例にしてみましょう
【1.6m】 × 【1.6m】× 22 = 56.32㎏
標準体重は、「56.32kg」となりましたね。
体重1kgに対して必要なカロリー
算出した標準体重に、寛解期(かんかいき)は、「35kcal」
活動期は、「40kcal」を掛けることで、 1日のエネルギー量を算出できます
35 や 40 という数字は、「体重1kgに対して必要なカロリー」ですね。
この数字は、個々の年齢や活動量、
潰瘍性大腸炎では、炎症という部分が加味されていると考えてよいでしょう
炎症はエネルギーを使う病態ですからね。
- 寛解期:【標準体重】 × 【35kcal】
- 活動期:【標準体重】 × 【40kcal】
寛解期の設定で、算出してみましょう。
【標準体重56.32㎏】 × 【35】= 1971kcal

1日のエネルギー量は、1971 kcalとなりました。
活動量の少ない一般成人の場合は、【標準体重】 × 【28~30kcal】ですので、
炎症を伴う病態では、高いエネルギーを必要としていることがわかりますね。

食事の考え方
下記は、潰瘍性大腸炎の食事についての考え方です
- 十分なエネルギーを確保する
- 低脂質
- 低残渣
- 低刺激
体調が落ち着いている寛解期は、厳密な食事制限がありませんが、
基本を忘れないようにしてくださいね。
気になる点は、十分なエネルギーを確保したいのに、低脂質ということなんですね。
脂質は1g 9kcal あるので、エネルギーを確保しやすい栄養素ですが、
たくさん摂取すると腸を刺激し、腹痛や下痢を起こしてしまいます。
必要なエネルギーを、炭水化物やタンパク質へ 上手に振り分ける必要があります。

エネルギーの振り分け

下記のように振り分けます
この比率が、健康の維持・増進のための目安なんですね。
- 炭水化物:50~65 %
- 脂質:20~30 %
- タンパク質: 13~20 %
1日のエネルギー量を「2000kcal」とし、
下記の割合で、算出してみましょう。
- 炭水化物:65 %
- 脂質:20 %
- タンパク質:15 %

炭水化物
【65%】×【2000kcal】÷【4kcal/g】= 325g
1日の炭水化物の目安量は、「325g」となりました。

ご飯は、お茶碗1杯 150gです。
2杯いただくと300gですが、それはご飯の重さであり 炭水化物の量ではないんですね。
ご飯150g中に含まれる炭水化物は、
「57.1g」ですので、間違えないようにしましょう。
1日に3回、ご飯を摂取しても炭水化物は「170g」程度のため、
エネルギーを確保することに苦労されると思います。
その場合、間食を設けるのも一つの方法ですね。
1食でたくさん摂取すると、胃腸に負担をかけますので工夫をしていきましょう
数字きっちりとやる必要はありません。目安に近づけることが目標です。

脂質
【20% 】× 2000kcal】÷【9kcal/g】= 44g
1日の脂質の目安量は、「44g」 となりました。
一般の脂質摂取の平均は「60g」ですので、比較すると少なく感じますが、
クローン病は、「1日30g以下」と決まっています。
潰瘍性大腸炎の寛解期は、特に制限なしと示されることがありますが、基本は低脂質。
1回の食事で摂る脂質を、10~15g程度に抑えるとよいでしょう。
下記は、私が好む食品の脂質量です。
- オリーブオイル大さじ1杯:14g
- サバ缶1つ:20~30g
- 大きなメロンパン:16.5g

メロンパンは大好きなので、何も考えず週に1度いただいています
楽しみも必要です。厳密な食事療法ではなく「適量」という考え方が良いでしょう。

タンパク質
【15% 】×【2000kcal】÷【4kcal/g】 = 75g
1日のタンパク質の目安は、「75g」となりました。
潰瘍性大腸炎は、寛解期と活動期があり、
炎症の程度により、タンパク質の消費が変わるため、
より詳しく算出をする方法が用意されています。
詳細は、下記の記事をご覧下さいね。

まとめ

いかがでしたでしょうか
潰瘍性大腸炎は、炎症を伴う病態と、食の事情によって多くのエネルギーを必要としています。
まずは、1日の目安量を知り、過不足がないよう気をつけていきましょう
エネルギーの振り分けも大切でしたね。
症状をおそれるあまり、お腹にやさしい お粥や、おうどんに偏ったりしていませんか?
残念ながら、それでは体が作られませんし、機能しないんですね。
人の体は、三大栄養素のタンパク質・脂質・炭水化物と、
それらの代謝をサポートする、ビタミン・ミネラル・食物繊維を必要としています。
一時的なエネルギーを補う食事ではなく、
体が喜ぶ食べ方を学んでいただけますと幸いです。
症状の改善を目指して、一緒に頑張っていきましょう。

今日もありがとうございました

お体ご自愛下さい

参考文献
- 食品成分表 2021 女子栄養大学出版
- 健康21シリーズ14 女子栄養大学出版
