- 下痢の回数が多い時、何を食べたらよい?
- 食べるのがこわい、水さえ飲みたくない…
- 食欲がない
- 再燃かもしれない

というあなたへ
こんにちは
看護師のたかはしです
ナース歴・潰瘍性大腸炎歴はともに20年以上となりました。
あなたの症状が少しでも改善されますよう、これまでの苦労や経験を活かし、医療者としてご提案・ご案内をしてまいりますので、どうぞよろしくお願いします!


体調がわるい時は、「お腹に優しい食事」を意識しましょう
潰瘍性大腸炎だから特別にこの食事を!ということではなく、「低脂肪」「低残渣」「低刺激」を心がければ、胃腸に負担をかけません。
「あれもこれもダメ」「怖いから食べないでおこう」ではなく、「あなたの腸の様子に合わせた食事」が必要です。
正しい情報を知れば、いざという時、大きく動揺せず対処できますし、いつものご飯を→優しい食事へ切り替えれば、症状の改善が見込めますよ。
それでは一緒に見ていきましょう。
なぜ食事に気をつけるのか

胃腸への負担
胃腸へ送られる「食べもの・飲み物」はバラエティーに富んでいます。
何をどのように摂取するかはあなた次第、腹八分目のやさしい食事あれば、暴飲暴食や脂肪コッテリ・熱すぎ辛すぎなど、胃腸にとってよろしくない食べ方もあります。
基本どんな条件でも、胃腸は黙々と消化・吸収活動をしますが、胃腸だって限界があるわけです。
食欲不振、キリキリする・お腹が張る・げっぷ・胃もたれ・胸やけ・腹痛・便通異常は、胃腸が発したあなたへのサイン。
しっかりと受け止めてほしいと思います。

元気だけど、暴飲暴食などで胃腸に負担をかける場合と。暴飲暴食はしていないけど、胃腸の働きが落ちたことに気づかず負担をかけるパターン。
どのパターンでも、早めに気づいて対処すること。下痢の回数が増えたなど、明らかなお腹の症状のほかに、何となく変だ、こうなった後かならず症状が悪化するんだよなぁ、など、あなたしかわからない感覚、予兆も大切にしてください。
体調が悪くなると、胃腸の働きはグッと低下します。「いつも食べていたメニュー」がうまく消化できなくなるので、なるべく早い段階で、食事を切り替えましょう。

体重減少・脱水
潰瘍性大腸炎は、「炎症」や「腸の修復」に、エネルギーやタンパク質を費やすため、十分な栄養が必要ですが、「飲食を制限する」あなたの行動が影響し、慢性的に不足しています。
からだはその不足分を、貯蔵庫(筋肉など)にある「タンパク質」で補います。体重減少がおこるのは、そのためなんですね。
食べられるのに、心理的に食べない選択をしているのか、あるいは全く飲食物をうけつけない状態か。もし口にできる状態ならば、制限してはいけません。

エネルギーや栄養・水分が不足しないよう、一緒に対策を考えましょう
下記は、筋肉に分布する「グルタミン」というタンパク質についてお伝えしています。ぜひご覧ください。
気をつけること
絶食について
「絶食すれば腸がよみがえる」という情報を見かけますが、エネルギー不足の現状で絶食することは危険です。
絶食を判断するのは、あなたの腸の状態を知る医師。安易な判断をしないようにしましょう。

脱水をおこす可能性があります
絶食ではなく、たとえば一食・二食抜いてみる、量を少なく回数を多くするなどの工夫をしましょう。
受診について
全く食べられない・なにも受け付けない、下痢がひどい・ぐったりしている・熱があるといった明らかに全身状態が悪くなっている場合は、入院治療が必要です。次の受診日を待たず、必ず臨時で受診をしましょう。
下痢の回数が明らかに増えた、再燃かもしれないと自覚したら、医師に伝えましょう。

緊急性がない場合でも、再燃かな?と思いましたら、一度様子を教えてくださいね
再燃期に気をつけたい食事のポイント

食事の形態

画像:日本介護食品協議会HPより引用。介護食の提案なので、胃腸にやさしい食事以前に、噛む・飲み込むを主とした対策表です。
こちらの表では、右へ行くほど胃腸に負担をかけない(消化・吸収しやすい)形態であることをご理解いただければ大丈夫です。
体調がわるい時は、噛まなくてよい飲みもの・スープ・ペースト形態 ~ 舌でつぶせる食事の形態がおすすめです。以下参考にしてくださいね。
飲みもの
体調がわるい時、食欲がない時、必ずここ(飲みもの)へ戻ります。いつも食べていた食事をいったん止めて、飲みものからスタートします。
お腹の調子をみて落ち着いているようなら、飲みもの + スープ形態 → おかゆ形態、の順に進めます。
下痢で失われる「水分」「塩分」「カリウム」を補いましょう。
柑橘系(みかん・レモン・グレープフルーツ)や、食物繊維がたっぷり入ったジュースは、この時期の胃腸には負担ですので、下記の飲みものを参考にしてください。
- 経口補水液
- スポーツドリンク
- トマトジュース(塩入り)
- 梅・昆布茶
- 野菜ジュース(にんじん・ミックス)
- ジュース(りんご・もも・洋ナシなど)
常温 ~ あたたかい飲みものは、腸を刺激しません。量は少なく・回数を増やし、積極的に飲みましょう。
飲んでも吐く、全く飲めない時は、臨時(急ぎ)で受診です。また様子をみても下痢が良くならない、悪化するときも受診(早め)です。

下記は手作りの補水液です。
果汁を入れるとカリウムを補給できますが、柑橘系果汁はこの時期避けたいです。手元に経口補水液がないなど、いざという時の一時的な対応で利用しましょう。
- 水:500ml
- 塩:小さじ1/4杯
- 砂糖:大さじ2・1/3杯
スープ・ペースト系
一口大の野菜がごろごろ入ったスープではなく、食材の形がない形態です。体調がすぐれない時期なので無理はせず、市販のものを利用するとよいですよ。
- 野菜スープ(にんじん・じゃがいも・おろし大根など)
- 市販のカップスープ(粒なしコーン・ポータージュなど)
- くず湯
- なめらかなお粥(ペースト粥)
- カスタードプリン
- たまご豆腐
- やわらか食感のコンポート(りんご・もも)
- ゼリー
おかゆ系
食材のかたちを残すが、やわらかく消化しやすい形態です。
- おかゆ
- うどん
- 茶碗蒸し
パン粥もよいですね。おかゆ系を卒業すると次は、やわごはん → いつものごはん、へ戻していきます。
食材えらび

この時期は食べられる範囲がせまくなりますが、しばらくは胃腸にやさしい食材をえらび、スープやお粥に取り入れてください。
主食
下記の食品を、柔らかく調理していただきます。
- うどん・ソーメン・はるさめ
- 米
- もち
- 食パン・フランスパン
おかず
おかずも柔らかく調理しましょう。
タンパク質
- 豆腐
- はんぺん
- 青魚・白身さかな
- たまご(ゆで卵除く)
- とりささみ
- プロテイン
脂質
この時期、料理のときに使う油は、使わないか、使っても極力控えめにします。高脂肪食品は止めましょう。
やさい・くだもの
- にんじん・大根・かぶ
- キャベツ・ほうれん草・はくさい
- かぼちゃ・さといも・じゃがいも
- カリフラワー
- りんご・もも・缶詰くだもの(パイナップルを除く)
間食・その他
差し支えなければ、おやつでエネルギー補給をしましょう。
幼児用ビスケット・ボーロ・カステラ・ヨーグルト・乳酸菌飲料・紅茶・せんべい(ゴマ・豆入り・揚げ・辛いもの除く)・和菓子(粒あん除く)・あめ・蒸しパン(レーズン・ナッツ類・トウモロコシ除く)などはおすすめです。

自分の体調がわかってくると、スープやお粥形態からスタートしたり、飲み物とおかゆ・おやつを併せたりアレンジができるようになります。
おなじ食材でも、体調がよいときは摂取できるけど、わるい時は控える場合があることをご理解くださいね。
まとめ


いかがでしたでしょうか。
今回は体調がわるい時の、食事の形態と食品えらびについてお伝えしてきました。
ポイントはいったんいつものご飯をストップし、胃腸をいたわることです。
「飲みもの」からスタートし、様子をみて落ち着いているようなら、→ スープ形態 → おかゆ形態、の順に進めます。
さらに落ち着いたら、やわごはん → いつものごはん、へ戻していきましょう。焦らず、ゆっくり。

うまく切り替えれば、症状の改善が見込めます
今日ご紹介した食品は、「低脂肪」「低残渣」「低刺激」なものばかりですので、ぜひ参考にしてください。一回量を少なく、回数を増やすことを忘れずに。
それではこのへんで。ありがとうございました。

お体ご自愛下さいね
下記はプロテインの紹介です。スープやおやつに混ぜれば栄養価を高めます。ぜひご一読ください。
参考文献
画像引用元:ユニバーサルデザインフード日本介護食品協議会
女子栄養大学出版:健康シリーズ14