【潰瘍性大腸炎】気になる合併症(がっぺいしょう)について

  • 合併症って何ですか?
  • どんな合併症があるの?
たかはし
たかはし

こんなお悩みはありませんか?

こんにちは
看護師のたかはしです
ナース歴・潰瘍性大腸炎歴はともに20年以上となりました。

あなたの症状が少しでも改善されますよう、これまでの苦労や経験を活かし、医療者としてご提案・ご案内をしてまいりますので、どうぞよろしくお願いします!

合併症(がっぺいしょう)という言葉、そもそも聞きなれないですよね。

例えば病院で、何らかの検査や、手術をすることになった時、

これらを行うことで起こり得える、新たな病気や症状を【合併症】と言います。

医師から説明を受けたことが、一度はあるのではないでしょうか。

一方で、ある病気に伴って起こる、【合併症】もあるんですね。

潰瘍性大腸炎という病気、に伴って起こる、新たな病気や症状のことを指します。

それらは、

  1. 腸そのものに起こる「腸管(ちょうかん)合併症」
  2. 腸以外に起こる「腸管外(ちょうかんがい)合併症」

に分けられています。

今回は、1.「腸そのものに起こる合併症」について、一緒に見ていきたいと思います。

腸管(ちょうかん)合併症

腸そのものに起こる、腸管合併症は、

  • 炎症(えんしょう)の悪化、によるもの
  • 長期にわたり持続する炎症、によるもの

の2つがあります。

炎症の程度は、軽いものから重いものまでありますが、

軽い炎症も長期に渡ると、合併症を起こしやすくなります。

炎症(えんしょう)の悪化

潰瘍性大腸炎の【炎】は、炎症の炎であり、

この炎症がきっかけとなって、病気が発症するんですね。

炎症を「火事」に例えると、わかりやすいかもしれません。

もしも、大腸の中で「ボヤ」が発生し、そしてひどい「火事」へ移行してしまったら…。

ふだん、私たちの大腸の内側は、しなやかでツヤツヤしていますが、

火事でやけどを負うと、内側の粘膜(ねんまく)が「ただれ」を起こし、傷ついてしまいます。

そしてそのまま放置をすると、やがて下記のような合併症を引き起こします。

1.たくさん出血する(大量出血)

「軽い炎症」でも、腸の粘膜はただれて、出血をしますが、

より「深刻な炎症」によって、粘膜が深く傷つくと、血管がむき出しの状態になります。

Dr. かなや
Dr. かなや

「容易」に出血しやすくなる、というわけですね。

潰瘍性大腸炎では、「便に出血が混じる」のは、主な症状なんですが、

ここでいう出血とは、「命に関わる大きな出血」のことを指しています。

2.中毒性巨大結腸症(ちゅうどくせいきょだいけっちょうしょう)

大腸には、平滑筋(へいかつきん)という「筋肉」が取り巻いています。

リズミカルに収縮を繰り返しながら、ガスや内容物を移送する、などの働きをしているんですね。

このような運動を「蠕動運動(ぜんどううんどう)」というのですが、

腸内の「炎症」により、動きが低下し、さらには停止をしてしまうこともあるのです。

移送できなくなった「ガスや内容物」が蓄積した結果、腸がふくらんで巨大化し、

腸に穴があく危険性が高まるというわけです。

3.穿孔(せんこう)腸に穴があく

大腸の壁の厚さは、「3~5mm」ほどあり、その内側が粘膜(ねんまく)となっています。

外側に向かい、「粘膜」 → 「粘膜の下層」→ 「筋肉の層」と重なり合い

丈夫な壁をつくっているんですね。

しかし炎症が悪化すると、粘膜にとどまらず、より深い層まで、えぐられてしまいます。

たかはし
たかはし

いつ穴があいてもおかしくない状態に、なってしまうんですね

穿孔(せんこう)といって、腸に穴があくと、

緊急手術が必要となります。

炎症の持続

「軽い炎症」でも、長期に渡れば、やがて合併症を引き起こします。

また、症状が落ちつく「寛解期(かんかいき)」と、

再び症状が悪化する「活動期(かつどうき)」を繰り返すことでも、合併症のリスクを伴います。

「寛解期」や「活動期」については、下記の記事を参考にしてくださいね。

大腸の狭窄(きょうさく)

炎症(えんしょう)の持続や悪化、またその繰り返しによって、

「腸の内腔」が狭くなることを、「狭窄(きょうさく)」言います。

本来、食物やガスなどが、上手に移送されるのですが、

狭くなった腸内では、通過障害が起きてしまいます。

Dr. かなや
Dr. かなや

炎症を起こした腸が、正常に戻っても、「狭窄」そのものが残ることがあるんですね

範囲や、程度によりますが、腸の安静を保つことが必要で、

症状が重い例は、入院をして治療が行われます。

大腸がん

潰瘍性大腸炎を発症し、10年以上経過している、

病気の範囲が、大腸の全体を占める「全大腸炎型(ぜんだいちょうえんがた)」などの

条件が重なると、大腸がんを発症するリスクが高まるんですね。

大切なことは、症状が落ち着いても、「大腸カメラ検査を定期的に行う」ということです。

下記の記事では、大腸がんについて少々触れていますので

ぜひポイントをおさえて下さいね。

まとめ

たかはし
たかはし

今日のお話は、腸そのものに起こる【合併症】についてでした。

潰瘍性大腸炎は、改善が難しい症例もありますが、

大部分は、「適切な治療」と、ご自身の「生活習慣を改める」ことで

炎症を最小限に抑えることができます。

つらい症状が落ち着く、「寛解期(かんかいき)」を目指すことが目標で、

それを維持できるということは、「合併症のリスク」を、下げることができるのですね。

しかしながら、一時的に症状がよくなると、自己判断で内服を中止したり

定期的な受診をやめてしまう例が、多くあるのです。

そういった行動は、一度おさまった炎症を、再び引き起こします。

腸内を「炎症」にさらす機会を増やしたり、長引かせたりすることは、

「合併症のリスク」を高めてしまいますので、

潰瘍性大腸炎と上手に、お付き合いをしていってほしいと思っています。

Dr. かなや
Dr. かなや

次回は、腸以外に起こる合併症について、お話をしていきましょう

それでは、今日はこのへんで。

たかはし
たかはし

ありがとうございました

参考文献

  • 潰瘍性大腸炎の診断基準(2021年1月改訂)
  • 潰瘍性大腸炎治療指針(2021年3月改訂)
  • 潰瘍性大腸炎外科治療指針(2021年1月改訂)